澄んだ朝の空気を切り裂くように走る、走る、走る。さっき家を出るときに一瞥した時計から推測して、今は7時15分。ああ、この前も遅刻しかけてぎりぎりだったのに!身体が小さい私は、目一杯足を延ばして駆けても全然進んだ気がしない。流れるいつもの景色。私がもうすこし未来に産まれていればどこへでもひとっとびだっだんだろうなあ。脳がショートし始める。途切れる息は白く変化して、後ろに流れていく。


擦れ違った自転車の男の子がすごく楽しそうでびっくりした。この時代、この世界、この場所でなんでそんなに楽しそうに自分を見せれるんだろう。疎ましく感じたのはきっと自分が切羽詰まっているからだと思った。生気に満ちたその男の子が疎ましさから羨しさに変わる、その瞬間。気が付くと鼻歌を歌いながら走っていた。楽しくてしょうがなかった。楽しまなきゃ損だとさえ思った。終わってない課題も、今夜帰ったら取り組もう。きっと山手線も待っていてくれている。私は走る、走る、走る、きらきらのほうへ。









(010307.)